Rapha Prestige Kuju 〜レポートpart3 ダンス・ウィズ・ミスタータンノ(2)

ひとつだけワガママを言わせてもらいます。

今回もスタート前にエスプレッソかカプチーノが欲しかった(笑)

ラファジャパンのモバイルサイクルクラブ(移動式店舗)カーである「ルイゾン」には本格的なエスプレッソ
マシンが搭載されていて,去年『上勝』でのスタートの前には参加者に美味しいコーヒーがふるまわれた。

朝5時台スタート前のあわただしいときだし,スタッフのお仕事を増やすのは気がひけるのだけれど,
やっぱり飲めたらうれしいよね。



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「ルイゾン」は1950年代(ということは,グランツールの最盛期だ)にコッピやバルタリとともに大活躍した
フランス人選手ルイゾン・ボベにちなんだ車名。でも,スタート前に飲むならやはりイタリアンなエスプレッソだ。

 "ウン・カフェ・ドッピォ・ペルファボーレ!"

ダブルのエスプレッソをたのみ,余裕にみちた表情でグローブをはめ,たっぷり入れて底に残った砂糖を
最後にすすり髪を櫛でなでつけ走りだす。コッピのように...(と自分ではイメージしているわけ 笑)。

さあ,いよいよ丹野さんの「曲」がはじまる!




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5人そろってスタートラインをこえ,すぐに左折してくだり,小国町北里の集落をぬけて,朝の木もれ陽が
美しい道を北へむかう。スタートして12kmほどで熊本と大分の県境を一瞬こえ,折り返してふたたび
県境にそって南東に走り,飯田高原をめざす。

早朝のこの時間に小国杉の細道を走ると太陽が低い位置から差しこみ,ときには朝もやのカーテンの
中で仲間たちのシルエットが序曲のピチカートの上で踊るように浮かびあがる。

静かに静かによろこびの物語をはじめよう!という丹野さんの合図が聞こえるようだ。



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いたるところから温泉の蒸気が立ちのぼる岳(たけ)の湯温泉は3年前の『小国』のときにも通った
懐かしい場所。

今回は前後にShakariki Kyotoやテースケさんのチームではなく,地元福岡のMOZU COFFEEが走っている。
ときおりカメモジャージをデザインしたhautoくんとおしゃべりする。



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ゆく手に九重連山を眺めながら,県道と林道の出入りをくりかえして,最初のチェックポイントがある
長者原温泉ビジターセンターに到着。

ここまで35.5km。

キャプテンの計算では出発してから3時間弱,ここに9時に到着の予定。実際には8時半すぎに着いた
ので,30分ほどのゲイン。rocoさんはじめメンバー全員快調に走ってきた。



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去年とちがって,何よりも目標を「完走」に置いているので,ボクらは撮影や補給のためのストップを
最低限におさえて走りつづける。

思った以上にrocoさんの登りのペースも良いので,序盤で30分のゲインができたわけだけど,無理は禁物。

それでもさらにタイムを稼ごうという気持ちからか,ときどき先頭がペースを上げ気味になり,メンバーの
間に小さな中切れができてしまう。

ボクの考えでは,先頭がペースアップして後続に風をうけさせるよりも,チームTTの考え方そのままに,
できるだけ密集して走り,弱いライダーを風から守る方が結果としてはチームの速度は上がる。

rocoさんの前に大きなスペースができるたびにボクが前に入るか,大きな声で叫んで前のメンバーに
下がるよう求める。

たとえ登りでも,時速15kmも出ていれば(いまのチームなら5パーセントくらいの斜度までなら)
集団でまとまって弱いライダーの空気抵抗を軽くするべきなのだ。

この点はもっと練習のときに説明して徹底しておくべきだったなあと悔やみながら走る。



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長者原から少しだけ「やまなみハイウェイ」を下り,途中で林道にスイッチバックし県道621をしばらく
走り,南の長湯温泉へと抜ける急斜面の林道に入り,本峠をこえる。

路面のガレ具合やゆくてをさえぎる木の枝が「いかにも」という気配をかもし出すが,まだまだ人里が近い
感じがする。これはきっとやがてボクらを出迎える壮大な主題の序章なのだろう。

丹野さんがにやにやしている顔を思いうかべる。



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しばらく豊後街道(県道30)と並行する里の道をたどり,七里田温泉でトイレ休憩。このあたりは古くからの
街道沿いならではの歴史の層の重なりが見える。

かつて熊本から肥後のお大名の参勤交代の行列が瀬戸内の海路で東に向かったときにも,きっとこのあたりで
いっとき足を休めたのだろう。

けれど,今回ボクらは里から離れ,このあと久住高原の牧草地を一直線に進み,まるでくじゅう連山に向かって
最短で登るハシゴのような道をたどる。

4.5kmほどのあいだ,ガンジーファームの脇に出るまで,ただまっすぐに登ってゆく。それまでの「ザ・日本の
いなか」的な景色とのギャップがすごい。



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この前後でパンクが2回あり,お昼の補給のために少しストップしたけれど,修理も食事も路傍で手早くすませ
ロスタイムをできるだけ少なくする。

あとでふりかえると,11時前に七里田温泉でストップしたときに,手持ちのおにぎりなどの補給食をしっかり
食べておくべきだったなあ。

今回のようにお店でランチをとらず,携帯した補給食だけでエネルギー補給する場合でも,ある程度は補給の
タイミングを事前に考えておくべきだと学んだのでした。
(温泉と牧草地のあいだにあった「まんじゅうハウス」は予期せぬ楽しく美味しいオアシスだったけどネ)



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このあと牧場やゴルフ場が点在する高原の斜面を,まるで弾みをつけるかのようにジグザグと登り下りして,
笹鶴という地名の集落からやまなみハイウェイの南にある山吹水源まで続く,どこか別の惑星のような林道へと
離陸する。

「離陸」って変だけど,まさにそんな感じの道なのだ。

あとで調べてみると産山(うぶやま)村の牧野らしい。
*放牧や堆肥づくりのために農家や酪農家の組合が管理する草原を九州では「牧野」と呼ぶようです。

『プレスティージ』ではロードバイクだと細心の注意をはらわないとパンクしてしまう未舗装の区間が
かならず盛りこまれているけれど,ここの道はいわゆるグラベルというのとは少しちがう。。

一部をのぞくと路面は比較的スムーズで,リズミカルにカーブを描く緑の道をひたすらたどって行く。

うわあ,これはやられた。さすが丹野さんだ。まるで何度も何度もおなじパッセージをくりかえして
音の反復が快感をうみ出すボレロのような道をよくも見つけたものだ。

こんな道はこれまでの『プレスティージ』にはなかった。なんて面白いハイライトだろう(と,このときは
思っていた)。



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惑星の緑の道を抜けて,山吹水源への入り口に着いたところで少し休憩。

上田尻牧場の脇をぬけて,やまなみハイウェイに出れば,瀬の本の第2チェックポイントはすぐそこだ。



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キャプテンの計算だと,112.5/136km地点のここに3時すぎに着ければ余裕を持って完走
ゴールできる。

CP2到着。時計は3時20分をさしている。大丈夫。カラダの力が少し抜ける。
自分でも気づかなかったけれど,内心では焦っていたし,緊張もしていたんだ。



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他のチームがレストハウスでゆったり座って食事をしているのを横目に,ボクらは最低限のストップで
先を急ぐ。

聞けば,CP2の関門クローズが3時半から4時に変更されたらしい。

完走率を高めるためだけど,逆に言えば,最初の「3時半」という厳しい関門にはきっとわけがあった
はずだ。キャプテンのあの言葉を思い出す。

 残り24km。登って下るだけ。

 だけのはずだけど絶対何かある。
 CP2で"スキー場までの登りがキクよ"って情報だけど,それだけじゃないでしょうよきっと。

そう,それだけじゃなかったのだ。



(しつこく続く)



by pedalweb | 2017-05-03 21:01 | 自転車系イベント | Comments(0)