さようなら高木さん,たのむよ啓さん!

この週末は『ジャパンカップ』,衆議院選挙それに超大型台風上陸とビッグイベント(?)揃いでにぎやかですね。

ジャパンカップには今季で引退するコンタドールも参戦。雨にも負けず日本のロードレースファンを
楽しませてくれました。ありがとうアルベルト!

でも,本当なら表舞台でレースを盛り上げる選手たちに負けず劣らず裏方で大活躍をするあの人がいません。

そう,フォトグラファーの高木秀彰さんの姿がない。

自転車ロードレースファンで国内のロードレース関連のニュースをチェックしたことのある人なら誰でも
きっと一度は目にしたことのある報道写真のクレジット「Hideaki Takagi」のあの高木さん。



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*2010年関西シクロクロス第4戦・琵琶湖マイアミランドで。ボクが高木さんと辻さんのおふたりを揃って撮った
 唯一の写真。



ジュニアからコンチネンタルチームの選手にいたるまで,またオンロードのレースだけじゃなくトラックも
シクロクロスもカバーして,素晴らしい写真はもちろん,冷静で客観的なレース展開の分析に自転車愛を
にじませたレースレポートでも楽しませてくださった高木さん。

悲しいことに先週亡くなってしまいました。

まだ50代半ばで情熱と円熟のバランスがとれた素晴らしいジャーナリストでした。レース写真とレポートでは
国内で比肩する才能がいなかった方。残念でなりません。

ボクは高木さんとのおつきあいはほんのわずかだけれど,自転車と写真を愛するサイクリストとして
身近に接した彼の人柄と後輩にあたる辻啓さんのことを少し書いてみたいと思います。

(記載内容にいくつか誤りがあったので,10月23日のお昼に訂正をしています)


       *       *       *


高木さんとはじめておしゃべりしたのはいつどこでだろう?

たぶん関西シクロクロス2010-2011シーズンの希望ヶ丘の会場だったはず。

雪つもる森の中のシングルトラックの脇で,当時写真趣味に熱中しはじめていたボクが望遠レンズと
広角レンズと2本のレンズを付け分けたデジイチ2台を手にわくわくしながら選手がやって来るのを
待っていたときだった(と思います)。

シングルトラックをはさんで向かいあったところにいらした高木さんはそんなボクに対してプロの権威など
微塵もちらつかせることなく,まるで同級生に話すように選手のことやレースの見どころを楽しそうに教えて
くださった。

ボクは,報道の人だろうけど気のいい方だなあくらいの受けとめ方をして,自分の撮影ごっこに
ただ夢中。いい人だなあくらいにしか思っていなかった。



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*このレースではまだ高校生だった(2016年シクロクロス全日本チャンプの)沢田時選手(現ブリジストン
 アンカー)が印象的でした。



でも,もしかしたらこの記憶は間違っているかもしれません。

というのも,高木さんは国内のほとんどのロードやトラックやシクロクロスのレースの撮影にいらしていて,
ボクらにとっては「レース」=「高木さんがいる場所」と言えるほどだったので。

高木さんを見かけないレースなんてほぼなかった。

もうひとつ,ボクが高木さんとおしゃべりして印象的だった場面を思い出します。

それは2011年11月の野辺山シクロクロスへ行った日のこと。

前泊の宿の駐車場に車をとめると,高木さんのレガシーもそこに。

よもやま話の途中,高木さんいわく,宿には泊まらずに(?)車中泊して星空を撮るんですと。

へぇ変わった人だなあ。雰囲気も語り口もボクの同級生の理系エンジニアの友人たちと
似てるなあとボクはまじまじと彼の顔を見たのでした(実際,高木さんは島根大学時代は理系学部生で,
部活は自転車部と天文部をかけもちされていたとか)。

一方では,基本的に自営業であるフォトグラファーというお仕事にしては,組織でもまれて角がとれた
「おだかやな社会人」としての空気をまとっていらっしゃる(実際21年間サラリーマンをしてらした)。

でも他方で,孤高というか純粋で,ある意味世捨て人の気配もあって,なんだか『ムーミン』に出てくる
スナフキンみたいな雰囲気の人でもあるなあとボクは思ったのでした。

そして,ボク自身にもそんな側面はあって,年令も近いので,文系と理系のちがいはあるけれど,
長いつきあいの同級生みたいな親しみを高木さんに抱いていたのでした。

きっと,あの気さくで飾らない人柄にみんな同じような気持ちを持っていたろうなあ。



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*Photo by シクロワイアード。追悼記事はこちら→『シクロワイアード』



そんな高木さんのあの柔らかな笑顔をもう見ることができません。選手にそそぐ温かなまなざしが
感じられるあの記事を読むことができません。

ひとつひとつの記事は小さな一歩であっても,日本の自転車レース界を着実に大きなものにしてゆく
なくてはならない貢献だったと思います。イチローの言葉「小さいことを重ねることが,とんでもない
ところへ行くただひとつの道」って,まさに高木さんの功績にあてはまる言葉でした。

どなたかがfacebookでコメントされていましたが,高木さん安らかにおやすみください,と言っても
きっと星空を撮ろうと寝ないんでしょうね。ボクも寂しい気持ちをおさえてお別れを告げなければ。

なお,『シクロワイアード』編集長の綾野真さんによれば,ご葬儀は以下のようにとりおこなわれるとの
ことです。

 10月27日金曜日午後4時から(21時まで開けておられるようです)。
 埼玉県入間市扇台3-1-19 シティーホールいわさき
 *くわしくはこちらで→『ご葬儀詳細』



       *       *       *


そして,いま誰よりも高木さんの死を悲しまれている自転車仲間のひとりは同じフォトグラファーの
辻啓さんだろうと思います。

辻啓さん(以下,啓さんと呼びます)も『シクロワイアード』をメインに自転車レースの写真と記事で
いまやなくてはならない存在。

『シクロワイアード』では,編集長の綾野さんと啓さんがおもに海外のレースを,高木さんが国内の
レースを担当されることが多いですね。

綾野さんがまだ自転車ジャーナリズムの世界に入られる前から「チバポンズ」(綾野さんをはじめとする
千葉大自転車部OBのチーム)のメンバーの皆さんのウェブサイトの記事を楽しませてもらっていたので,
その綾野さんが国内有数の自転車レース関連サイトを立ち上げ,そこに高木さんや啓さんの写真や記事が
掲載されるのを見るのはちょっと不思議で愉快な出来事でした。



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大阪の名店『エスキーナ』主催のサイクリングに行けば,記者としてデビューしていた啓さんや
まだ小ぢんまりしてアットホームそのものだったラファジャパンのメンバーがいる。

レース会場にゆけば啓さんや高木さんがカメラを手にバリバリ撮影している。

レースのあとはお二人の記事を読んで楽しむ...

ボクら日本の自転車好きにとっては,あの頃からそんな素晴らしく幸運な時間が続いてきたのでした。



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*2013年の春,トスカーナ地方シエナの街で。そうくるか!といつも感心する啓さんのアングル。



ボクが啓さんと出会ったのもやはり2010年頃で,そのあと彼のプライベートなツアーで一緒にイタリアに
行ってトスカーナ地方をガイドしてもらったことも。

高木さんが「静」のイメージだとすれば,啓さんは「動」。

実際に彼が写真を撮るのを見ていると,いつでもベストアングルを求めて,思いもかけないところに
移動してカメラを構えていたりする。彼の写真独特の「立体感」はあの軽快なフットワークのたまもの。

きっと『ジロ・デ・イタリア』の取材のときにも,地元イタリアの記者やフォトグラファー以上に
ルートを綿密にチェックして,プロトンの先まわりをして,どん欲にベストショットを狙っているん
だろうなあと,一緒に旅してよく理解できました。

日本には砂田弓弦さんという偉大な自転車レースのフォトグラファーの第一人者がいらっしゃる
けれど,日本のレースファンのみならず,プロツアーの選手たちやイタリアのジャーナリストたちからの
「愛され方」という面では,啓さんは負けていないのでは?

3月のイタリアでレース会場に行くと(『ストラーデ・ビアンケ』でした),あのいつものおなじみの
短パンルックにイタリア人記者たちがツッコミを入れて「この寒いのにやっぱり短パンかよぉ」みたいな
やりとりをしている(笑)

でも,『ガゼッタ』にもバンバン掲載される写真の腕前にイタリアのオヤジたちが間違いなく敬意を
払っているのが感じられて,ボクらも誇らしくなる...そんな旅でした。



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だから,自転車レースを愛するフォトグラファーでありジャーナリストであると同時に,ファンや同業者から
愛されるという点でも,啓さんこそまさに高木さんの良き仲間であり後継者だと思います。

ボクらは高木さんという素晴らしい仲間を失ってしまったけれど,啓さんがいることで,
自転車レースを楽しむ場面がモノクロームにならないですんでいる。

いつも高木さんのニコニコした笑顔を心の隅において,これからも活躍してください!



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*Poto by Rapha Japan



折りしも,いまラファのサイトの特集記事のひとつとして,啓さんのキャリアや彼の地元ライドの
ルートの紹介がされています。

楽しい記事です。皆さん,ぜひご一読を!→Rapha Features 'Kei Tsuji'






Commented by や ま at 2017-10-23 22:31 x
とても驚きました、高木さんの訃報。
もう随分と薄れてきた記憶を辿っていたのですが、20数年前、確か高松で仕事をされていたと思います。当時、地元の小さなイベント(レース?)などで何度か一緒に走ったことがあったような記憶。メタリックグリーンのフレームで、後ろはディスクホイール、当時はあまり見かけなかったワンピースジャージ姿が印象的でした。何度かお話したこともあり、写真もいただいたなあと、手元の記録を見ていたら、なんと2006年のエタップツアーで一緒でした。
ご冥福をお祈り申し上げます。
高木さんの分まで生きることが、残されたものの務めかとも思っています。
Commented by ペダル at 2017-10-23 23:19 x
や まさん,高木さんともお知り合いでしたか。
高木さんが2006年にエタップに出られたのは知っておりましたが,考えてみれば,エタップ常連のや まさんと面識があるのは当然ですね(稲垣さんも2006年のことはfacebookでの追悼文に書かれていました)。https://twitter.com/i/web/status/888043178468691968 しかもサラリーマン時代の高木さんともや まさんはご一緒されていたのですね。ボクが尊敬するサイクリストの方同士がお知り合いでうれしい反面,3人でおしゃべりする機会を永遠に失ってしまったのが悲しいです。高木さんの分までにこやかに行きましょう!
by pedalweb | 2017-10-22 18:35 | カメラ,写真 | Comments(2)