ラファ・ライズ大阪〜秋の文化体育祭(ワイナリーめぐりの部)part2
2017年 11月 17日
Rapha RIDES Osakaのワイナリーツアー,最初に訪ねるのは羽曳野市内にある「河内(かわち)ワイン」と
「飛鳥(あすか)ワイン」です。
閑話休題。
さて,2つのワイナリーで自転車を止めて聞くエイタさんのレクチャーも,とても興味深いことばかり。
ワイナリーの成り立ちからはじまって,実は国内でのブドウ栽培が江戸時代から大規模におこなわれてきたこと, 戦前には軍の潜水艦で使う酒石酸をとるために,政府からワイン造りが緊急軍需物資として奨励されていた話なんて いうのも。
聞けば聞くほど,ブドウ(ワイン)づくりって日本でも実に長く多彩な歴史があるんですね。
そしてレクチャーのあとは,いよいよブドウ畑めぐり。
こちらは,事前に農家の承諾をとってあるので,ふだんは入れない畑の中の道を通れるらしい。ワクワク!
ふだん大阪南東部の金剛山や大和葛城山に登りに行くときには,ボクは竹内街道と並行して山側を走る 「南河内グリーンロード」を通ってゆくのですが,その左右に広がるブドウ畑をいつもは外側から眺めて いるだけ。
今回はその中にお邪魔して,しかもプロの説明が聞ける...
ただし,畑の間を縫うようにウネウネと続く農道はものすごい激坂の連続。
上の写真のような路面で最大斜度28%!思わず足をついてしまいました(苦笑)
こんな斜面に広がる畑での手入れや収穫が主に軽トラと人力だけで行われているそうですが,その苦労が よ〜くわかる畑クライム!
(翌日ひさしぶりに筋肉痛になりました 笑)
やっぱりサイクリスト的には,レクチャー聞くのも大事だけど,「足を使って体で感じる」のはもっと素敵。 とんでもない激坂ばかりなのに,参加の皆さんはたぶん畑の中で今日一番の笑顔を見せていました。
みんな,どうかしてるぜ(笑)
しかも,エイタさんはそんなみんなのニーズをよく理解されていて(さすがソムリエさん!),ブドウ畑の 次はミカン畑の激坂もガイド。
ここもふだんは通れない観光ミカン園なので,今回は事前の手配があってはじめて走ることができる道。
そっか,いつも下から見上げていたつづら折れってこんなふうになってるんだ...
そして,ミカン園から下ったあとは,西に進み穴虫(あなむし)からスイッチバックして,ふたたび 大阪南東部のもうひとつのブドウ産地,柏原へ。
ここにはその名もズバリ「ブドウ坂」という,大阪東南部のヒルクライマーの御用達の坂があって, 斜度のキツイつづら折れの坂の途中には「柏原ぶどう」というデッカイ看板が掲げられています。
今日のランチは,地元のスーパーで買ったものをその看板のすぐ下にある畑の脇でいただくのだとか。
まあ15名と人数が多く,このあたりでまとまった人数で入ってランチできる店がないので仕方はないですね。
というか,大和川から大阪平野を見渡す丘の上でみんな揃って電線にとまったスズメのようにランチを 食べるのはけっこう愉快な経験。
毎年桜の季節には地元の人たちがお花見をされている場所で,ブドウを絞った残実が積み上げられて いたりして,いかにもワイナリーのそば!って感じです。
さて,のんびりとお昼を食べたあとは,すぐ近くのブドウ畑にある日本で2番目に古いブドウの木を 見物に。樹齢100年を越えるブドウの木(品種は「甲州」)があるんだとか。きっとすごい大木だろうなあと, みんな期待して,ブドウの棚の天井にアタマをぶつけないようにかがんだ姿勢でブドウ畑の坂を歩いて行きます。
あいにくボクはうまく写真を撮れなかったのですが,100年を越える古木といっても,ブドウの場合は 大木にはならず,教えてもらわなければ,他の木とのちがいはほとんどわかりません。
*ネットで調べると,畑の所有者「カタシモワイナリー」の方にインタビューしたすごく良い記事がありました。 古木の写真のほかに,明治時代から戦後までの柏原のブドウ畑の様子がわかる貴重な写真も。 かつては大阪府下に119ものワイナリーがあったなんてスゴイ!
*「カタシモワイナー」の醸造場のシャッターは南仏チックなブドウの絵柄。いまの5代目の社長さんの趣味?キュート!
場所はどちらも竹内街道(R166)沿いで,石川を東に渡ってしばらく行ったあたり,近鉄南大阪線の隣同士の駅
駒ケ谷駅と上ノ太子駅のすぐ近くです。
ちなみに「飛鳥ワイン」の「飛鳥」は地名にちなんでいるのですが,奈良の「明日香(あすか)」とは
別の場所で,同じ読みなのですね。
「上ノ太子」という駅名からうかがえるように,このあたりは聖徳太子の墓所の最寄り。ほかにも推古天皇陵や
小野妹子の墓など,歴史上有名な人物にちなむ史跡があちこちにあります。
いまの地勢や文化施設の様子から考えると,一時期このあたりが古代の日本の中枢だったとはにわかに
信じがたいのですが(何も知らないで行くと,大阪郊外のごくふつうの近郊都市にしか見えない)
かつては大阪湾が現在よりもずっと東,生駒山地のふもとまで広がっていて(河内湾),羽曳野市のあたりは
海を間近に見下ろす丘陵地で,奈良(大和)から港へ通じる玄関口として栄えたのでしょうね。
知人の日本史の専門家にきくと,羽曳野から堺にかけて広がる仁徳天皇陵などの巨大な古墳群は,海の向こう
大陸からやってくる渡来者たちに自国の威信をしめすランドマークでもあったということなので,
いまとはちがって大阪南部のこのあたり一帯は大和(やまと)国の最先端といえる場所だったのでしょう。
つまり,「飛鳥」は,いまでいうと東京駅から品川にかけての一帯と同じような機能を果たした場所なのかも
しれません。
う〜ん,そう考えると,なんだかすごいところでワイン作っているんだ(笑)
でも,あとで調べてみると,奈良の正倉院の宝物の中にはワイングラスがあったり,滋賀の紫香楽宮
(しがらきのみや)の跡からまとまったブドウの種が出てきていたりと,もともとはヨーロッパ原産の
ブドウがシルクロード経由で日本に渡ってきたわけで,古代からこのあたりは「ブドウ(ワイン)」と
深いつながりがあった土地なのですね。面白いなあ。
上の記事を読んでなるほど!と目からウロコが落ちたのですが,柏原や羽曳野の西斜面にブドウ畑が広がる
地理上の理由は,ここが瀬戸内式の気候で,雨量が少なく南風や東風の影響を受けないことだそうです。
そっか,生駒山地や葛城金剛山地が風を防いでいるし,大阪平野の南部エリアは典型的な瀬戸内式気候で
雨が少ない(だから,ため池が無数にあります)。
そして,昭和の初期にはブドウの栽培面積が日本一だった大阪のブドウ栽培が衰退したのは(それでも
いまもトップ10以内),2度の室戸台風によるダメージが大きかったからだとか。
こうしていろいろ知ると,いつも走っている「南河内グリーンロード」や「ブドウ坂」がうんと身近に
感じられて,地元産のワインをいろいろ飲んでみたくなりますね。
ということで,古木を見学したあとは,強烈な向かい横風の中を大阪市内にもどります。ブドウ畑で
足を削られたあとだけに,トレインを組んで大和川のサイクリングロードをけっこうなペースで走るのは
ほとんど練習モード。ここはオランダか!(苦笑)
向かう先は,ガイドのエイタさんのお勤め先である大阪市内のワイナリー『島之内フジマル醸造所』。
最初に話を聞いたときは「えっ!大阪市内にワイナリーなんてあるの?」とびっくりしたのですが,
行ってみると百聞は一見に如かずで,ホントに都心のど真ん中にちゃ〜んとワイナリーが。
ここでもエイタさんから,この場所でワイン造りをはじめたいきさつや苦労話,また使われている器具などの
説明。
そしてもちろん,せっかく来たのだから,ここで造られているワインが欲しい!というボクらの要望に
応えて蔵出しの新酒の販売も。
この日は山形産のブドウを使った赤と白。ボクは白をいただいて帰ることに。これは楽しみだあ〜。
ここは醸造所の上がレストランになっていて,もちろん食事とともに正真正銘「地産地消のワイン」が
楽しめます。次はディナーに来なくては!
また,途中で世界各地のワインを扱われている日本橋にあるショップも案内していただいたのですが,
お店の奥にあるセラーの在庫量には圧倒されました。
参加者のフランス人グザヴィエさんは,ご家族がラングドック・ルーションにワイナリーを所有されている
ほどのワイン通だそうですが,在庫の中に地元のワインを見つけてうれしそう(笑)
*「これ美味しいんですよ!」と地元のワインを見つけてニコニコ。
こうして朝から日が暮れるまで,自転車とワインの知的冒険で楽しんだ一日でした。
もちろんブドウやワインの勉強を通して,地元の姿をさらに奥行き深く知ることができた貴重な体験でも
あるわけです。
いやあ,「大阪のワイナリー」って,思っていたよりずっと興味がつきない題材でした。
こんなに面白くて楽しい企画を実施していただいたラファとエイタさんに感謝!そしてシャポー!
by pedalweb
| 2017-11-17 17:45
| 自転車系イベント
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