自転車ウェアと風土〜Café du Cycliste(カフェ・デュ・シィクリスト)の場合

先日走ったときに出会った自転車仲間もふくめ,ボクの知り合いのサイクリストのラファ着用率はすごく高い。

そして,ボク自身ラファのウェアを知ってからもう9年がたち,ずっとお気にりのブランドとなっています。

*最初は2009年の春で,ラファジャパン代表の矢野さんに初めてお会いしたのもそのときでした。

そのとき以来,「着て走る愉しみ」の多くをラファに教えてもらっただけじゃなく,愉しみを共にする
友だちと出会い,一緒に路上の冒険に出る面白さの多くもラファに教えてもらってきました。

いったいどれくらいラファのジャージやビブやジャケットやらを買ったんだろう?(笑)

ときどき他のブランドのウェアも買いつつ,今もやはりふだん着て走るのはほとんどが「ラファ」です。

その機能やデザインの先進性,それに何より他の自転車アパレルのブランドになかった「ロードレース文化への
敬意とそれに根ざした企画の発信」というラファの精神に大きな魅力を感じているからです。

そんなボクの自転車用ワードローブに最近フランス発のあるブランドのウェアが少しずつ加わりはじめています。
少しずつゆっくりですが。



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*左のチーズの容器みたいなのにキャップが梱包されて届くのがお茶目だ(笑)



南フランスの観光地ニース発のブランド『カフェ・デュ・シィクリスト』がそのブランドなのですが,イタリアの
『ラ・パッシオーネ』などとともに,非英語圏のヨーロッパブランドとしては日本でも徐々に知名度が上がりつつ
あるようです。

実物をまじかに見る機会がなかったこともあって,存在を知ってからはじめて購入するまで1年ほどかかり
ましたが,去年からジャージを2枚(長袖・半袖)とビブショーツを1着買っています。

*価格はほぼラファと同等ですが,ディスカウントの機会が少ないので,買うタイミングによっては
 ラファより少し高いかも。

まだ着用して長時間走る機会がないのですが,品質には満足(作りや縫製は丁寧です)。デザインはかなり
奇抜なものもあって,ボクの個人的な「デザインのヒット率」はラファよりも低いかもしれません(笑)

でも他のブランドにはない大きな美点があって,それがボク自身の「嗜好」とは別に,とても好ましく
思えるのですね。



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その「好ましさ」とは,このブランド発祥の街ニースをはじめとする南フランスの風土感,(よりきれいな
言葉で言うと)「光と風と空気」が,このブランドのアイデンティティとして強く意識され,ウェブサイトにも
うまく表現されていることに対して感じているものです。

上のモノクロの写真はブリジット・バルドー主演の『素直な悪女』の一場面ですが,もう60年も前の
この映画のワンカットから,ニースあたりのコート・ダジュールの洒脱さや軽やかさが伝わってきます。

『カフェ・デュ・シィクリスト』というブランドは,いかにも南仏のリゾート地「コート・ダジュール」らしい
優雅さとその背景地である「プロヴァンス」の風土の少し荒々しい雰囲気を余すことなく表現しています。

そこに好ましさを感じるのですね。

*余談ですが,右のオープンカーはボクが一番好きなランチアで,ランチア・アウレリア。トガリすぎず
 艶やかになりすぎずに名門の華やかさを体現した,とてもランチアらしいモデル。
 もちろんランチアはトリノ発のイタリアンブランドですが,コート・ダジュールつまりフレンチ・リビエラにも
 とても似合っています。



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『カフェ・デュ・シィクリスト』のデザインの中には,何でこんなの出すの?と一見いぶかしく思える
ものが少なからずあるのですが,それは伝統的な和装やエスニックの衣装にも似て,よく見ると,とても
南フランスらしいモチーフや色彩感覚にもとづいたものが多いのです。

たとえば下の写真はずいぶん前に南仏(コート・ダジュールではなくてもっと内陸部のプロヴァンス)で
撮ったマルシェの風景ですが,日本とはちがったフォルムと色彩の感覚があって,『カフェ・デュ・
シィクリスト』のウェブサイトの商品にもこれと同じ血統がうけつがれているのが感じられます。




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ラファの登場は自転車アパレルの世界に,スポンサーロゴだらけのプロチームジャージのデザインとは
まったくちがったスタイリッシュなデザイン言語をもたらしました。

そして,最初は英語圏を中心にラファのあとを追うアパレルブランドがどんどん生まれ,やがては非英語圏の
ブランドも続々と登場しています。

いまもそのトレンドが続いているわけですが,その中でも『カフェ・デュ・シィクリスト』には,デザインの「伝統」
だけではなく,誕生の地がまさにグランツールのステージでもあるという「地の利」があります。

考えてみると,ここにかぎらず,ロードレースの世界の現実がどんどんグローバル化の方向に進むのとは逆に,
趣味の自転車の世界ではどこかその背景となる風土を感じさせるブランドこそがこれからますます脚光を浴びる
のではないでしょうか?

フランスからはフランスらしい,イタリアからはイタリアらしい,スペインからはスペインらしい,ベルギーからは
ベルギーらしいブランドがもっと登場するとイイなあと思います。



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ちなみにこの3枚はピカソが晩年を過ごしたカンヌ近くの邸宅の写真ですが,ニース,カンヌやモナコを
中心としたコート・ダジュールの海岸部の祝祭的な喧騒から離れた,プロヴァンスらしいゆったりした
「くつろぎ」を見事に写し撮っています。

ベベがオープンカーで走っていたコート・ダジュールの海岸部は夏のバカンスの時期には大渋滞し,まったく
サイクリストには向いていません。

おそらくサイクリストが走るのはこんな瀟洒な邸宅が点在する,プロヴァンス地方のもっと内陸にかけてのエリア
でしょう。

そして,ここに写っている「くつろぎ」こそ(少々リッチですが)『カフェ・デュ・シィクリスト』のウェアが
体現しようとするエッセンスだとボクには思えます。

もちろん,ロードレーサーという乗り物やロードレースとは不可分の「スピード」「鍛錬」「征服」etc.と
いったストイックな方向のベクトルも盛り込まれてはいますが,それらを共有する英語圏や北欧・イタリア・
スペインといったエリアのブランドには見られなかったのが,この「くつろぎ」であり,風土への愛着だと
思えるのです。

ここのウェアに袖を通すと,また陽光あふれる南仏の地を旅したくなります,風と光を感じながら。





by pedalweb | 2018-05-17 07:27 | 自転車パーツ&ウエア | Comments(0)